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November 16, 2005

ペルー国交断絶宣言報道に納得いかない

またもやrenqingさんがとても重要な問題提起をなさっていたので、憲法を守るための制度的保障を他国の憲法と比較してみたいと思っていますが、検討すべき点が多岐にわたるので、時間をかけて考えたい。

さて、11月13日にアルベルト・フジモリ元ペルー大統領が密かに日本からチリに入国し逮捕され、「日本との外交断絶を」というかなり強硬な発言をペルー副大統領がし、話題になった。

ところが、私の目にする限りの報道では、ペルーの副大統領の発言のあったこととペルーの国内経済に対する日本の経済的貢献についての話題だけが多く、その経過が明らかでない。他の国から国交断絶(日本が断絶している国は北朝鮮しかない)宣言されてしまうというのは、重大事態なのでその背景についての解説が薄く、本日は黒田清子さんの結婚報道一色で違和感を感じていた。

フジモリ出国

フジモリ氏:日本出国しチリに ペルー大統領選へ帰国準備

アルベルト・フジモリ元ペルー大統領 【メキシコ市・藤原章生】東京に滞在していたペルーのアルベルト・フジモリ元大統領は6日午後(日本時間7日未明)、チリの首都サンティアゴに到着し、市内のホテルに入った。同大統領の政党「シ・クンプレ(成し遂げる)」のデルガドアパリシオ幹事長が毎日新聞の電話取材に明らかにした。

 フジモリ氏はサンティアゴ到着後、「ペルーに帰国し、06年の大統領選に立候補するという約束を果たすためチリに一時的に滞在する」と声明を発表した。チリへの電撃入国は、隣国で出馬の意欲を訴え、ペルー国民の支持を獲得する狙いとみられる。

 フジモリ氏は00年11月に日本に入国し大統領職罷免後、ペルー国内で対テロ作戦の際の人権弾圧など21件の罪で起訴され、ペルー司法当局は国際刑事警察機構(ICPO)を通じ、フジモリ氏を国際手配している。AP通信によると、チリ政府報道官は同国外務省がペルー側の要請を受け、裁判所に逮捕状発行を申請したことを明らかにしたが、裁判所がどう判断するかは明確でない。

毎日新聞 2005年11月7日 11時07分 (最終更新時間 11月7日 12時32分)


そしてさらに産経新聞に掲載された共同通信の記事

「日本との外交断絶を」 ペルー副大統領が強硬発言

 

12日付ペルー紙エスプレソによると、同国のワイスマン副大統領は11日、チリで拘束されたフジモリ元大統領をめぐる日本側の対応について不満を表明、今後日本との外交関係を断絶すべきだとの考えを明らかにした。

 副大統領は、これまでもこの問題で対日批判を繰り返してきたが、外交断絶という強硬手段に言及したのは異例で、内外に波紋を呼びそうだ。

 副大統領は、フジモリ元大統領に駐チリ日本大使館員が面会したことなどをあらためて強く非難、ペルーのマキャベロ駐日大使の召喚だけでは日本に対する抗議姿勢として不十分だと主張した。

 一方、同紙によれば、今回の外交断絶発言については、与党国会議員の中からも「ペルーにとって経済上重要な日本との関係を悪化させることは、投資や援助の減少につながる」と批判が出ているという。(共同)(11/13 10:24)

この記事だけを読んで、「経済的に日本に依存しているのに国交断絶発言するなんてペルーってなんてバカな国なんだ」的なブログを散見したが、このような薄い内容の報道だけで判断しているせいで、国交断絶などという剣呑な発言に至ったかを看過している。

まず、この間ペルー政府は日本国政府に対して再三フジモリ元大統領の引渡しを要求してきた。
その理由としては、ペルーの司法当局がICPOを通じて人権侵害と汚職で国際指名手配していることにある。
この点日本政府は、フジモリが日本国籍をも有していたことから日本人として保護している。
このことからペルーで日系人への憎しみが増し白眼視される事態に陥ってしまった。

フジモリの犯罪

フジモリ引渡しを実現させよう 独裁、腐敗、人権侵害の10年間の記録参照

独裁者と言われたフジモリが大統領を罷免された後、ペルー国内で、特別殺人、重度傷害、強制的失踪、日本からの募金疑惑、在リマ日本大使館公邸襲撃事件に関する犯罪者を裁判にかけずに処刑した疑惑などで訴追されている。そのなかで特別殺人、重度傷害、強制的失踪の詳細は以下のとおり。

a) バリオス・アルトス事件:1991年11月3日22:30頃、リマ市リマ区バリオス・アルトス、ウアンタ通り840番地の住宅で、「ポヤーダ」と呼ばれるパーティーが行われていたところ、武装した6名が襲撃した。

襲撃者は、警察のライトを点灯しサイレンを鳴らし、2台の車で現場に乗りつけた。現場に到着した時、ライトとサイレンを消した。防寒帽で覆面した襲撃者は車を降りて、住居に乱入し、そこにいた者たちに地面に伏せるよう命じた。その場を制した襲撃者は、2分間に渡り無差別に発砲し、15名を殺害、その中には8歳の少年も含まれていた。また、4名に重症を負わせ、そのうちの1名、トマス・リビアス・オルテガ氏は永久に身体障害者となった。
b) ラ・カントゥータ事件: 1992年7月18日未明、防寒帽で覆面した軍人が、リマ市郊外にあり「ラ・カントゥータ」という名で知られるエンリケ・グスマン・イ・バジェ大学を襲撃し、銃尾で強打したり足げりを加えたりしながら、学生9名と教授1名を選び出して誘拐した。

c) 共謀、公文書虚偽記載、および公金横領により国家に損害を与えた罪

などである。

国家予算の違法な支出疑惑

2000年8月25日、国軍統合本部長ホセ・ビジャヌエバ・ルエスタ将軍は、コロンビア国境におけるコロンビア革命軍 (FARC)のペルーへの侵入および国境での破壊活動を阻止するため、国防省に対して20,173,278ドルの予算増額を要請した。

これに基づき、カルロス・ベルガミーノ・クルス国防相は、経済相に同額の予算増額を要求した。

これらの要請に基づき、2000年9月19日、アルベルト・フジモリ大統領が署名し、フェデリコ・サラス首相、カルロス・ボローニャ・ベール経済相、カルロス・ベルガミーノ・クルス国防相が副署した緊急政令第081-2000号が発布された。この法的措置は、国防省が20,173,278ドルまでの財源を使うことを許可するものであった。

2000年9月22日、カルロス・ベルガミーノ・クルス国防相は、上述の緊急政令に基づいて15,000,000ドルの現金の引渡しを要求した。この現金はルイス・ムエンテ・シュワルツ国防省総務局長が受け取り、その後ブラディミーロ・モンテシーノスに渡された。

この金は、ブラディミーロ・モンテシーノス・トーレスに退職金として支払われた。アルベルト・フジモリ大統領がモンテシーノスに国外逃亡を受け入れさせる代償として手渡されたものである。

また、ペルー国軍統合本部がコロンビアとの国境での作戦計画を立案したことは一度もなかったとことも付け加えなければならない。

2000年11月2日、アルベルト・フジモリ大統領はベルガミーノ・クルス国防相と大統領官邸で会うため彼に電話した。同国防相は官邸で、国庫に返すため15,000,000ドル相当の金が入ったスーツケース3個をフジモリに渡した。この金は国営銀行から引き出されブラディミーロ・モンテシーノスに手渡された金そのものではなく、他の予算項目から出されたもので、国防省予算に穴を開けた。

ブラディミーロ・モンテシーノスへの国家財産流用不正支払い事件における刑事責任

この事件では、許可されていない目的のために国費を流用したことが指摘される。 また、国家公務員にこれほど巨額の退職金を支払うことは不適切であり、実際には当局に対する強請であったことから、違法な支払いであったことが立証される。

アムネスティーインターナショナル声明「アルベルト・フジモリ元大統領を送還しなければならない」

日本財団のブログを見ると、こういった犯罪事実などまったくなかったかのような友好ぶりだ。

犯罪者であるフジモリに対する日本政府の至れり尽せりの友好関係を見るに付け、「アリジャン」さんなどの難民にもう少し親切にできるだろうと思った。

また、フジモリを追放したペルーに対して経済的に冷たかった日本に対して、中国企業が進出したりしているので、日本に対して意見を言える状況になっているようだ。Letter from Ceylon参照

日本がペルーの内政に干渉しそれだけにとどまらず、犯罪者をもかくまったというのがペルー側の認識のようだ。
国交断絶するぞくらい言いたくなることに納得した。ペルーでの人権侵害や汚職に日本の政府や企業がどのくらいかかわっていたのかも気になるところだ。
外国に内政干渉して虐殺行為にかかわった人物をかくまうなんてアメリカ合衆国並だ。国際社会でそこまで孤立しなくて済んでいるのは経済力の賜物なのだろうか。


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Comments

TBありがとうございます。
で、
「日本がペルーの内政に干渉しそれだけにとどまらず、犯罪者をもかくまったというのがペルー側の認識のようだ。国交断絶するぞくらい言いたくなることに納得した。」

まだまだ納得されないように。
南米政治は奇々怪々。

ペルーの今の大統領は初めてローカル出身である話、副大統領のワイスマン、この「-マン」とつく苗字につきものの民族は?とさらに混沌にはまっていきます。

さらに、ペルーの輸出頭は銅。銅と一緒に産出されるのはレアメタル。中国もペルーのレアメタルとダブっているものを世界市場で押さえている。それに群がる欧米日本の企業群と中国の思惑。

誰が善玉、誰が悪玉と言えないようですよ。

ではでは。

Posted by: FRANK LLOYD | November 16, 2005 at 02:17 AM

 南米の政治は、本当に分かりずらいです。一方だけの意見を聞いても、全体は分かりません。

 まあ、フジモリ10年の大統領は大成功だったと思います。1万%のインフレ克服、テロ親玉逮捕、日本からの十分な援助獲得、人質開放、エクアドルとの平和条約締結。。。

 前大統領の売国奴アランガルシアも亡命から帰ってきて、大統領選挙には出るし、そもそも現大統領がスタンフォードの経済学博士でアメリカの強力なバックで大統領になったものの、実力不足のため、支持率10%を割っていることで、焦っているのでしょう。フジモリに危機感を抱いているはずです。「器」が全然違うことを大衆は感じとっています。 となりの国でも、フジモリのような強力なリーダーシップがある大統領が欲しいと言っていました。

 どこでも左巻きの人、マスコミは、都合のよい様に解釈するので、嘘が多いです。要注意!
 

Posted by: 元南米人 | November 16, 2005 at 07:29 AM

>FRANK LLOYDさんコメントありがとうございます。

今後とも関心を持っていろいろ勉強していきたいです。いろいろ情報をよろしくお願いいたします。

>元南米人さんコメントをあるがとうございます。
強力なリーダーシップというと聞こえがいいかもしれません。ただ、その手段や方向性が問題になるのでしょうね。

先ほども書きましたが、いろいろもっと勉強したいです。現状としては、ペルーがなんで「国交断絶」とまで言っているのかを知りたかったので。都合の良いように解釈するのは人間の常ですのでこれからも批判的に分析していきたいです。

コネのある大物と良心的な普通の人との日本政府の扱いのあまりの格差がなんともいえない気持ちにさせられてしまいました。

Posted by: miyau | November 16, 2005 at 09:29 PM

見事な位にアメリカの都合で動かされているのが、ペルーの政権ですね。

当初アメリカに都合が良かったフジモリが、その後にアメリカに追い出された、そして今戻ってきたと・・・。

ちょっとばかりエゴのぶつかり合いが激しすぎますねぇ。構図それ自体が醜い。

Posted by: 三輪の何某 | November 16, 2005 at 11:43 PM

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