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November 14, 2005

日本国憲法の柔軟性-外国人の人権

外国人は日本国憲法のもとで人権を認められるのか(人権享有主体性)
renqingさんの提起している問題、外国人の人権の享有主体性の問題だが、字句どおりに読めばそう読めなくはないが、これについてはその権利の性質に応じて人権の享有主体性を有するとうのが判例通説となっている(マクリーン事件参照)。

まず外国人の人権の享有主体性自体を否定する学説は国籍だけで基本的人権享有主体性の有無を判断することは平等権の侵害につながり、妥当ではないとして(少なくとも法学者の中には)採用されていない。

ただし、人権享有主体性が認められるとして、どういった権利が認められるかについては学説が分かれている。

まず、文言説(これがrenqinsさんの言う「国民」とあるか「人民」「万民」とあるかで分かれるとする説)であるが、現在この説は日本国憲法の条文上17条や22条を参照すると必ずしも厳密に「国民」と「万民」が使い分けられていないのでこれまた採用されていない。

そこで、現在の判例通説は権利の性質上適用可能な人権については全て認めている。

あとは、各種人権に応じて個別的に判断されているが、平等権(14条)表現の自由(21条)や個人の尊厳(13条)をはじめとする精神的自由(思想信条の自由(19条)信教の自由(20条)請願権(第16条)奴隷的拘束及び苦役の禁止(第18条)集会、結社及び表現の自由と通信秘密の保護(第22条)勤労者の団結権及び団体行動権(第28条)生命及び自由の保障と科刑の制約(第31条)裁判を受ける権利及び適正手続きの保証(第32条33条から40条までの)刑事訴訟手続きにおける権利保障は外国人にも権利の性質上当然認められる。

第22条〔居住、移転、職業選択、外国移住及び国籍離脱の自由〕や〔財産権〕29条は14条13条に反しない範囲で制限されうる。

これは、教科書的な説明でいうと、精神的自由と経済的自由を区別し精神的自由をより厚く保護している。経済的自由権はあとから回復されうるということと22条の居住移転や職業選択の自由は政策的に外国人が望ましくないとされる場合に合理的な規制は許容される。

争いがあるのは参政権や公務就任権、再入国の自由、在留権、社会権(これは定住外国人については法律によって認められている)である。

また、新しい権利といわれるものについても憲法13条を根拠としてプライバシー権などが認められている。

このように基本的に法律は刑法については人権を抑制するものであるため厳格解釈を求める(罪刑法定主義)傾向にあるが、私権の範囲や人権については柔軟に解釈されているのだ。

また、憲法だけでなく法律というものの性質上すべての事柄を予測して法文化することは困難なことから民法1条や憲法13条のように「一般条項」という解釈の指針をもとに裁判を遂行できるようにしている。

また、憲法に定められていない権利であっても法律や条例、条約などによって新たな権利を創設することが否定されているわけでもない。

改憲論のなかによくこれこれの権利をつけたしてはどうかなどという論を見かけるが、憲法改正によってしか不可能なものを見たことがない。

難民問題と憲法

難民の問題についていうと出入国管理法及び難民条約の運用上の問題が大きい。通常難民とは1951年の「難民の地位に関する条約」では、難民は、「人種、宗教、国籍、政治的意見やまたは特定の社会集団に属するなどの理由で、自国にいると迫害を受けるかあるいは迫害を受ける恐れがあるために他国に逃れた」人々と定義されている。今日、難民とは、政治的な迫害のほか、武力紛争や人権侵害などを逃れるために国境を越えて他国に庇護を求めた人々を指す。
しかし、難民条約という国際法を批准していながら難民申請についての判断が厳格にすぎ(入国から60日以内に申請しないとすべての難民認定が拒否されてしまう60日ルールなど)、不法入国者を扱う出入国管理局が難民認定を行っているなど、問題が山積している。我が国もインドシナ難民の大量発生という新事態を契機として難民条約に加入したものの、これまでに認定された難民からインドシナ難民を除くと,未だに20年間で200名に満たない難民認定数であり,1994年から1997年の4年間は毎年1名という認定者数に過ぎない(2002年日弁連意見書参照)
こうした、不正義がまかりとおっているのは、憲法に問題があるからではなく憲法を守る側の立法の怠慢、行政、司法の憲法及び国際法の趣旨に対する不見識からくるのであり、難民問題についての国民世論の無関心からくるものである。いますぐにでも難民条約の趣旨に合致する法律を整備すれば、解決できる問題なのだ。

こういった基本的人権を尊重する意思の薄い政府与党の言う「新しい人権」に私は懐疑的にならざるを得ない。

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