« 史上最強のビジネスマン手帳当選 | Main | コメント欄が無いので(汗) »

December 12, 2005

生活の平穏と言論の自由

自衛隊のイラク派遣に反対するビラを配るため東京都立川市の防衛庁宿舎に無断で立ち入ったとして、住居侵入罪に問われた市民団体の男女3人の控訴審判決が、12月9日に東京高裁であり、中川武隆裁判長は、全員を無罪(求刑懲役6月)とした東京地裁八王子支部の第1審判決を破棄し、罰金刑を言い渡した。3人の被告は即日上告。

自衛隊宿舎ビラ配布、3被告に逆転有罪・東京高裁判決

 自衛隊のイラク派遣に反対するビラを配るため東京都立川市の防衛庁宿舎に無断で立ち入ったとして、住居侵入罪に問われた市民団体メンバー男女3人の控訴審判決が9日、東京高裁であった。中川武隆裁判長は全員を無罪(求刑懲役6月)とした一審判決を破棄、10万―20万円の罰金刑を言い渡した。3被告は上告した。

 判決理由で、中川裁判長は「ビラによる政治的意見の表明が言論の自由により保障されるとしても、管理者の意思に反して建物に立ち入ってよいということにはならない」と指摘。(1)各室玄関前まで立ち入り、抗議を受けても繰り返した行為は相当とはいえない(2)居住者らの不快感などに照らすと法益侵害が極めて軽微とはいえない――として、犯罪が成立する違法性を認定した。

 罰金刑は大洞俊之(48)、高田幸美(32)の両被告が20万円、大西章寛被告(32)が10万円。判決は未決拘置1日を5000円に換算しそれぞれ20日分を刑に算入しており、実際の納付額は大洞、高田両被告は10万円、大西被告はゼロとなる。 (13:35)

法益侵害の定義が問題なのではないだろうか。住居権の問題で言うのであればここでいう管理者はそれぞれの住居。集合住宅の場合は、廊下は共有部分なのでドアの内側となるのが通常だろう。そうでなければ、宅急便の配達ですら構成要件に該当してしまう不当性がある。

居住者の不快感ということだけをあげて、即刑事罰というのも極論にすぎる。「商業的広告であれば不快ではない」というコメントを見かけたが、エロチラシでも不快ではないのだろうか。私はたいへん不快だ。また、新聞勧誘員が自宅に来てドアポストに新聞の広告チラシを入れていったとする。不快に感じる人が警察に電話をしたら勧誘員は逮捕されてしまうのだろうか。今度110番して試してみようか。自分と考えの違う人間はすべて死んでしまえくらいの偏狭な価値観が見え隠れする。

厳格を旨とする刑法の解釈で、可罰的違法性の問題に引きずり込んだ法構成自体が問題ではないのだろうか。
一審では二重の基準を用いて可罰的違法性を問題としているが、法的な保護を与えられるべき(他者を刑務所にぶち込んで国家権力が介入すべき程度)か否かを判断する構成要件自体を厳格に解するべきではないのか。
本来的には構成要件の該当性自体疑わしいと言わざるを得ない。

この判決は、法と常識の狭間で考えようでご指摘のとおり、

小泉政権が有事法制を整備し、いつでも戦争ができる体制を整えようとしており、これに併せて、警察や検察が、政府の方針に反対する市民の言動についても取り締まる体制を整えつつ中で、政治的なビラを配布しようとする行為について、その内容が反政府的な内容であれば取り締まっても良いと認めたことになる。
 これで、ますます、この種のビラ配布行為が刑事事件として立件されて弾圧される世の中になっていくことが強く予想される。
同様の懸念を感じる。

東京高裁が「言論の自由は認められる。政府の見解に反しない限りにおいて」と公言しているのだ。この国の裁判所にとってわたしたち国民の政治的言論はピザーラの宣伝チラシより軽いのだ。

自分の意見と異なるチラシなど決して見たくない人は、独裁者の治めるに住めばいいだろう。権力者に反対するビラなど目に付くところには決してないだろう。デモ行進も見なくて済む。そのような「生活の平穏」に価値を見出せるのであれば。
その背後に私たち自身の他者に対する不寛容がある。他者への不寛容が自分の首を絞めあげている。

立川反戦ビラ入れ事件控訴審判決に関する法学者声明

僕のつぶやき。ネットの窓から。


|

« 史上最強のビジネスマン手帳当選 | Main | コメント欄が無いので(汗) »

「経済・政治・国際」カテゴリの記事

Comments

 トラックバックありがとうございました。
 「事実上の平穏」よりも「住居権」を重視することによって、「政治的表現」を見たくないという「意思」を強調した判決だと思います。
 住居侵入罪の保護法益は、「事実上の平穏」と解すべきであり、平穏が害しない態様での立ち入りは、「侵入」の構成要件に該当しないと考えるべきだと思います。
 いずれにしても、非常に、政治的な判決だと思います。

Posted by: ビートニクス | December 12, 2005 at 02:48 PM

リンクTBありがとうございました閉塞した状況を何とかしたいと考えています。これからもよろしくお願いします。

Posted by: 僕のつぶやきネットの窓から。 | December 12, 2005 at 10:13 PM

二重TBは削除済みです。って、書こうと思って、そういえば、私もこちらにTBすると二重TBになりますね。すみません。ただ、私が引用している、民族派(つまり右翼)の方も、ビラ配りを禁止されたら、どうやって政治的意見をひろめられんだ?、と憤慨していまして、思わずTBしてしまったというわけです。ご勘弁。それにしても、この国が確実に不自由になりつつあるのを実感します。

Posted by: renqing | December 13, 2005 at 05:02 AM

言葉が足りませんでした。まさに、憲法が憲法たりえてない。憲法があってもなくてもこれじゃぁ同じです。政治家や、法律家に憲法を畏怖させるためにはどうすばいいのか、です。

Posted by: renqing | December 13, 2005 at 05:10 AM

>ビートニクスさんわざわざご挨拶と補足をありがとうございます。
補足して頂いたとおり刑法の論点でいえば、「事実上の平穏」が保護法益なのか「住居権」なのかについての争いです。
学説上の争いという枠組みだけでは理解しがたい運用と実生活との乖離を多くの人に(特に人を裁くという重責にある裁判官のみなさまに)理解していただきたいと思いました。
今回の判決では、権力者の振りかざす与える側の言う自分の言うことを聞くいいこちゃんに対する「権利」と本来的享受者が権力者に逆らう場合に守られるべき「権利」がごちゃごちゃに論じられている気がしています。

>僕のつぶやき。ネットの窓から。さんどうもコメントありがとうございます。
この閉塞した空気に嫌気が差している人がいろいろと考えて助け合っていけたら素敵だと思ってこのような雑文を書き続けています。
こちらこそよろしくお願いいたします。

>renqingさんいつもTBやコメントをありがとうございます。誰かが私の書くテキストを読んでいただけているというそれだけで、たいへん励まされます。
私たちの自由がピザーラのチラシより軽いことに憤りを隠せませんでした。
今回の裁判こそ刑法の範囲を超える立法を裁判官が行うことの不当性を問題にすべきなのかもしれません。
政治家や裁判官を動かすことができるのは、わたしたち有権者の意思表示しかありえないのではないでしょうか。まずは、自分の投票した国会議員にこの判決に反対しろと要請することでもいいと思います。
いいかげんな国会議員を監視するのが私たちの権利であり義務だからです。

Posted by: miyau | December 13, 2005 at 01:32 PM

Post a comment



(Not displayed with comment.)




TrackBack

TrackBack URL for this entry:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/24848/7579126

Listed below are links to weblogs that reference 生活の平穏と言論の自由:

» 自衛隊官舎へのビラまき有罪 [りゅうちゃんミストラル]
自衛隊官舎にビラをまいたとして起訴された3人に対する控訴審判決が出た。地裁では無罪判決が出ていたが、東京高裁は逆転で有罪の判決。3人は罰金刑を言い渡され、上告した。読売新聞判決は表現の自由か権利の侵害かを比較。権利の侵害があったと判断した。この事件で起...... [Read More]

Tracked on December 12, 2005 at 01:36 AM

» 大日本国憲法第21条 [本に溺れたい]
第21条 集会、結社及び言論、出版その他一切の表現の自由は、公共の福祉(=国家の [Read More]

Tracked on December 13, 2005 at 04:52 AM

» 自衛隊官舎ビラ配り・不当判決に思う [世相春秋]
昨年'04年2月、自衛隊イラク派遣に反対する市民団体の方々が、住居侵入罪に問われ逮捕されるという事件が起きました。一審の昨年12月の東京地裁八王子支部の判決では、「被告らの行為は住居侵入罪にあたる」としながらも、最終的には「憲法が保障した政治的表現活動で、放置状態の商業的宣伝ビラ配布より優先される」として、「動機は正当で、被害の程度も極めて軽い」として無罪が言い渡されました。しかし、東京高裁は12月9日。全員を無罪とした一審を破棄、一転して「有罪」を言い渡したのです。この判決の中で、高裁判決は「政治... [Read More]

Tracked on December 13, 2005 at 06:27 PM

» 立川ビラ配り控訴審判決批判の投書を嗤う [松尾光太郎 de 海馬之玄関BLOG]
<font size=3>凄まじい投書発見!・・今日の朝日新聞の投書欄『声』に常連投書者(笑)の投書がありました。<font color=red >『思想の弾圧につながる判決』</font>(埼玉県小川町の64歳男性)、標題から「つながる」という朝日新聞用語です(笑)。以下、引用開始。 <font color=green > 「(前略)門扉もなく自由に出入りできる郵便受けにビラを入れた行為が、刑事処分されるほど権利を侵害しているのか。商業ビラ配..... [Read More]

Tracked on December 16, 2005 at 01:28 PM

» 過激派に逆転勝訴−立川反戦ビラ事件−「言論の自由」を弄ぶな [涼風庵(人権擁護法案をGO FOR BROKE!!)]
自衛隊員とその家族を中傷するようなビラを巻き、「反戦」を訴えることは果たして許されるのか? 自衛隊員の立場からすれば、自分だけならまだしも家族にまで精神的な重圧を与えられるのは苦痛でしかあるまい。 家族との平穏な生活を奪う権利が、「言論の自由」なのか? ... [Read More]

Tracked on December 20, 2005 at 02:53 AM

» 立川反戦ビラ事件の被告人らの無罪を訴える法学者声明(1) [松尾光太郎 de 海馬之玄関BLOG]
<font size=3>立川でプロ市民が行った自衛隊官舎でのビラ配りに関する平成17年12月9日の東京高等裁判所の判決の余韻が続いている。被告側のプロ市民は上告して争う構えであり、19日にはこれらプロ市民を応援する<font color=red>『法学者声明』</font>が出された(この事件に関しては下記URLの拙稿もご参照いただきたい)。 ・プロ市民の立川自衛隊官舎ビラ配りに<No!>の控訴審判決  http://www31.ocn.ne.jp/..... [Read More]

Tracked on December 24, 2005 at 11:53 AM

« 史上最強のビジネスマン手帳当選 | Main | コメント欄が無いので(汗) »