« 気になるニュース(憲法改悪) | Main | SNSサイトを使った個人追跡システムに注意せよ »

December 23, 2005

映画「ロード・オブ・ウォー」に見る「蝿の王」へのオマージュ

アンドリュー・ニコルをなぜ好きなのか?
おそらく彼が好きなものと私の好きなものが驚くほど一致しているからだろう。
その一つが、ノーベル賞作家ウィリアム・ゴールディングの「蝿の王」(原題:Lord of fly)だ。4102146016
2回映画化され、1990年版はDVDも出ているが、1990年版「蝿の王」は不出来なクソ映画なのであまりオススメしない。小説を読んでもらった人と一緒に観たが、3人が3人とも「小説の深みを表しきれていないダメだ」と言っていた。もし、観るなら小説を読む前がいいだろう。
「蝿の王」はベルゼブブの別名だ。

今回の映画の題名を見たときに何かひっかかった。
それが「蝿の王」だった。

「蝿の王」は、戦争から疎開するための飛行機が銃撃を受け不時着、少年たちだけが無人島に着くところから始まる。導いてくれる「大人」はいない。
15少年漂流記やロビンソークルーソーに出てくる天国のような島。
そこで、少年たちは欲望の赴くままに生きる豚を狩る者達と、お互い助け合い家を建てる者たちに分かれていく。

弟ヴィタリーはラーフやピギーと重なる。「自分の中の獣(犬?)が暴れださないように」との台詞。

そして間違いなくユーリは蝿の王のジャックだ。

バレンタインの名前がジャックなのも蝿の王へのオマージュの現れなのだろう。

バレンタインは、生活からの隔絶を暗示するのか。

映画の構成が、最初のどん底生活から這い上がり成功を治めていく段階でのカタルシス。武器を売りつづけるために嘘に嘘を重ねていくユーリ。立ち直ろうとするヴィタリーを巻き込んで更なる闇に落ち込んでいくユーリ。それと、段々欲望が理性を凌駕し取り込んでいき酸鼻な虐殺に至る「蝿の王」の展開が重なっている。

そして、「蝿の王」では最後に「大人」がやってきてラーフたちをこの世の地獄から救いだしてくれる。
しかし、映画では「大人」は勲章をたくさんつけた軍人だ。救われるのはヴィタリーではなくユーリだ。

現実社会はそこまで絶望的な状況なのだ。アンドリュー・ニコルは金のためにコマーシャルを作っていろんなものを人に売る商売をしてきた。才能に恵まれ、美しい妻を持ち周りからも尊敬されている。権力に楯突く脚本を映画化しようなんて考えなければ、もっと豊かになれるだろう。戦争を売り込む「男たちのダイワ」みたいなプロパガンダ映画を作ってユーリになることもできるのだ。
しかし、彼はそれを潔しとしなかった。「武器商人はいなくならない」と嘆きつつも問題を世に提起する本作品を仕上げたのだ。その覚悟が豪華キャスト他多くの人を突き動かし、世界中でこの映画が上映されることになった。そして、私たちがそれを観ることができた。

人間は、その言葉だけではなく行動で評価される。私はそう信じている。

「ロード・オブ・ウォー」がお気に召した方は、「蝿の王」もご一読ください。「ガタカ」もお忘れなく(はぁと)。

この記事を評価する

|

« 気になるニュース(憲法改悪) | Main | SNSサイトを使った個人追跡システムに注意せよ »

「映画・テレビ」カテゴリの記事

Comments

Post a comment



(Not displayed with comment.)




TrackBack

TrackBack URL for this entry:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/24848/7791202

Listed below are links to weblogs that reference 映画「ロード・オブ・ウォー」に見る「蝿の王」へのオマージュ:

» 映画「ロード・オブ・ウォー 史上最強の武器商人と呼ばれた男」アンドリュー・ニコル/監督 [スチャラカランナーの日々]
 「ロード・オブ・ウォー 史上最強の武器商人と呼ばれた男」観てきました。  実在の武器商人何名かをモデルにして人物を作ったものらしい。  監督のアンドリュー・ニコルは「ガタカ」「トゥルーマンショー」「シモーヌ」の監督です。この3作は観ていますが、捜査官役のイーサン・ホークはガタカ以来ということですね。主演はニコラス・ケイジ。  ストーリーは、ウクライナ生まれのユーリーが武... [Read More]

Tracked on December 24, 2005 at 12:55 AM

» 映画感想「ロード・オブ・ウォー」 [三匹の迷える羊たち]
映画感想「ロード・オブ・ウォー」 【評価】★★★★ 【反戦】★★★★★ 【不条理】★★★ 【ブラック】★★★★ 【笑い】★★★★ 【エロ】★★ 試写会で見たのですが、ひさしぶりに良い映画でした。 僕は個人的にニコラス・ケイジはあまり好きじゃないので、「ケ....... [Read More]

Tracked on December 24, 2005 at 10:54 AM

» ロード・オブ・ウォー/史上最高の武器商人と呼ばれた男 評価額・1420円 [Blog・キネマ文化論]
●ロード・オブ・ウォー/史上最高の武器商人と呼ばれた男を豊川コロナワールドシネマ [Read More]

Tracked on December 24, 2005 at 04:25 PM

» ロード・オブ・ウォーとおそ松くん [とりあえず]
 私は人並みにアニメが好きで、一番好きなのはジブリの「耳をすませば」だ(車で聖蹟桜ヶ丘の坂を上ったこともある)けれども、ほかにも「キテレツ大百科」「ワンサくん」など見たいものがたくさんある。 その中で一番印象に残っているのがおそ松くんに出てきた「おでん禁止法」だ。 おでん禁止法の下、チビ太刑事は毎日おでんパーティーの取り締まりに忙しい。町を堕落から救い、治安を維持するために正義感の強いチビ太刑事は奮闘する。ところがある時隠れおでんパーティーに突入、検挙しようとすると、市長のイヤミからストップがかか... [Read More]

Tracked on December 30, 2005 at 05:51 PM

» 「ロード・オブ・ウォー」を観る [Cinema Satellite Neo]
12/16にメルマガ第105号配信してました。お題は「ロード・オブ・ウォー」です。 本作は、ソ連崩壊の混乱に乗じて巨万の富を築き上げた武器商人の半生を描いた作品。 監督・脚本のアンドリュー・ニコルが「映画の出来事のほとんどすべてに実例がある」と言うだけあって、武器..... [Read More]

Tracked on December 31, 2005 at 12:54 PM

» 映画館「ロード・オブ・ウォー」 [☆ 163の映画の感想 ☆]
実際にあった話を映画化したという、武器商人のお話。 悪いことがはびこる世の中、でもそれで儲かる人がいるっていうのも事実。最近話題になっているマンション問題を思い出しちゃいました。スケールは違いますが「人が死のうが生きようが私には関係ありませぇ~ん!」...... [Read More]

Tracked on January 01, 2006 at 10:58 PM

» 『ロード・オブ・ウォー』 戦争を支配する死の商人は誰なのか? [反米嫌日戦線「狼」(美ハ乱調ニ在リ)]
『いま世界には5億5千丁の武器がある。ざっと12人に1人の計算だ。残る課題は、“1人1丁の世界”』 『武器売買は素早さが命。よって万事、賄賂(ワイロ)が要る』 『キャッシュフローの無いテロリストは要注意。手形や小切手での決済はお断り。ドラッグ、宝石での決済は対価..... [Read More]

Tracked on January 03, 2006 at 11:41 AM

» 映画「ロード・オブ・ウォー」(アンドリュー・ニコル)のメッセージ2 [メッセージジャーナル]
キリストの対極にある者たち 前回の記事で「主人公への共感」と書きました。誤解のないよう注釈を加えますが、これは主人公がビジネスマン、都会の生活者として描かれていることによるもので、武器取引そのものへの評価ではありません。武器取引は、オルロフの妻が断言し....... [Read More]

Tracked on January 03, 2006 at 02:23 PM

» ニコラス・ケイジ主演「ロード・オブ・ウォー」 [西沢千晶のシネマ日記]
ニコラス・ケイジ主演の映画「ロード・オブ・ウォー - 史上最強の武器商人と呼ばれた男 - (Lord Of War)」を観た。 映画「ロード・オブ・ウォー」は、実在する何人かの武器商人たちの実話を元に、一人の“史上最強の武器商人の物語”として描かれた作品で、“Lord Of War”....... [Read More]

Tracked on January 07, 2006 at 11:18 PM

» 【劇場鑑賞】ロード・オブ・ウォー ―史上最強の武器商人と呼ばれた男―(LORD OF WAR) [ダディャーナザン!ナズェミデルンディス!!]
今世界には 5億5千万丁の銃がある。 ざっと12人に1丁の計算だ。 私が目指すのは・・・ ”1人1丁の世界” [Read More]

Tracked on January 09, 2006 at 06:13 PM

» ロード・オブ・ウォー LORD OF WAR [travelyuu とらべるゆうめも MEMO]
ニコラス・ケイジ、イーサン・ホーク主演 武器商人の物語 ロード・オブ・ウォー=戦争の主 ニコラス・ケイジのナレーションで  銃弾の製造過程が弾の視点にたっています そして アフリカの子供に・・・・ ユーリはウクライナ出身でブルックリンの リトル・オデッサで暮らしています 彼の家のレストランでギャングの抗争があり 使われていた銃器をみて ユーリは銃砲火薬類の商売人になり 一流の兵器ディーラーになることを目指します 不法武器取引を繰り返すうちに 彼はその手法も巧みになり セントラルパーク・... [Read More]

Tracked on January 09, 2006 at 07:55 PM

» ★「ロード・オブ・ウォー」 [ひらりん的映画ブログ]
2006年1本目の劇場鑑賞映画。 戦争物は余り得意じゃないけど・・・ この映画は武器商人の話らしいし・・・ 今のニコラス・ケイジじゃ、シリアスな戦争物は作らないだろーーし。 [Read More]

Tracked on January 09, 2006 at 10:54 PM

» 映画 : ロード・オブ・ウォー [青いblog]
見落とされてる作品のような気がするんですがこれ・・・ 何気にアカデミー賞では!?!?!? すごい、面白かったですよ!!!!!!!! 公式サイト: http://www.lord-of-war.jp/ 監督: アンドリュー・ニコル あらすじ: goo 映画 キャスト:ニコラス・ケイジ、イーサン・ホーク、ジャレッド・レト ロード・オブ・ウォー―史上最強の武器商人と呼ばれた男作者: アンドリュー ニコル出版社/メーカー: 竹書房発売日: 2005/12メディア: 文庫 戦争や病気や人... [Read More]

Tracked on January 15, 2006 at 12:06 PM

» ロード・オブ・ウォー−映画を見たで(今年8本目)− [デコ親父は減量中(映画と本と格闘技とダイエットなどをつらつらと)]
監督:アンドリュー・ニコル 出演:ニコラス・ケイジ、ブリジット・モイナハン、ジャレッド・レト、イーサン・ホーク、イアン・ホルム、ドナルド・サザーランド 評価:95点(100点満点) 公式サイト 強烈。 軽く繰り出されたように見えるのに、と...... [Read More]

Tracked on January 17, 2006 at 04:34 PM

» ロード・オブ・ウォー [映画とCINEMAとムービー]
弾の数だけカネが舞う―――― ロード・オブ・ウォー Lord Of War 史上最強の武器商人と呼ばれた男 怖い映画だった。実際に起こっている出来事だ。そう思うと空恐ろしい。 今、自分が平和で幸せな環境にいる事に感謝したい。 上質のスーツに手にはブリーフケース、ピカピカに磨かれた革靴で、敷き詰められた膨大な数の薬きょうの上を歩く。 史上最強の武器商人と呼ばれた男。分け隔てなく、どこの誰�... [Read More]

Tracked on February 17, 2006 at 06:36 PM

« 気になるニュース(憲法改悪) | Main | SNSサイトを使った個人追跡システムに注意せよ »