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March 04, 2006

格差と多様性-「障害者自立支援法」考

格差が広がっていることを「いいことだ」と実態の検証もないまま断言することに違和感を感じない人々。
彼らがコイズミやヘイゾーらとともに多くの人々の底辺の生活を更なる奈落に陥れている。

Tさんは74歳。今年37歳になる一人娘Kちゃんは重度の知的傷害。現在自宅から1時間ほどの施設に入所している。
Tさんが元気だった頃は、娘と同居していた。自宅までボランティアの人や福祉関係者が訪問して何かと世話を焼いてくれたりKちゃんを遊びに連れて行ってくれたりしてくれていて、Kちゃんは多少は自分で動いたり笑ったりしていたそうだ。

だが、Tさんが年老いていくに従い、自分でKちゃんをお風呂に入れたりの世話ができなくなり、泣く泣く「自分にもしものことがあっても大丈夫なように」と、養護施設に入所させた。
最初は、施設にも余裕があり、職員のみなさんも懸命にやってくれていたので、Kちゃんの将来に不安を感じることは無かったそうだ。

だが、「構造カイカク」や「規制緩和」が叫ばれ始めた頃から福祉政策がだんだんとおかしくなってきた。

まずは、職員が減らされ労働条件が悪くなり始めた頃からKちゃんはベッドに寝かされている時間が増え、感情表現も減っていった。
それでも、年老いて自分で引き取って面倒をみることは出来ない。彼女は寂しそうに言った。

そして、じわじわと弱者切り捨ての「優勝劣敗」思想が彼らの生活を侵食していく。
彼女は年金に加入していなかったので、夫の残してくれたアパートからの収入だけが頼りだ。収入が増えたわけではないのに、老年者控除の廃止で今年の税金は去年より3万円ほど増えた。住民税や国民健康保険料を合わせると6万円にはなるだろう。

国民健康保険も均等割りは上がりつづけ、年所得が200万円にも満たない彼女は以前より暮らし向きが苦しくなってきたそうだ。

そして、以前は無料だった重度障害者の施設内での自己負担も「見直し」の掛け声でじわじわと増えている。
彼女の年齢であれば、以前無料だった医療費も有料化され、更なる値上げがメール騒動の裏側で着々とすすんでいる。

そして、4月から「障害者自立支援法」が施行され、「契約」の意味の理解すらできないKちゃんは施設と後見人を通じて「契約」することになり、ここでも様々な施設や施策が「民営化」される。

「私にもしものことがあっても安心だ」と思っていたはずの施設にずっと入っていることはできなくなるそうだ。

Tさん:「何でこんなふうになってきたのだろう」。
私:「障害者問題や医療だけでなく9月11日の選挙以来いろいろな面で同じようなことが起こっていますよね」。
Tさん:「私は障害者や老人に冷たい自民党になんて投票したことが無い。誰が投票するんだろう」。
私:「この国の50%を少しだけ超える人々が投票しただけで議席を3分の2も自民党が獲得した。2人に1人の人が障害者や老人のことを何も考えずに投票した結果だともいえますよね」

Tさんは最近からだの調子が思わしくない。障害者福祉が「市場化」され、彼女の娘の将来に重大な不安を感じている。

彼女たちをじりじりと追い詰めているのは、何も新自由主義を標榜する支配者たちだけではない。
喜んで殺しているやつらだけではない。支配者の言葉に振り回されて無邪気に殺戮に荷担した人が2人に1人はいたということだ。

騙す者騙される者。必ずしも騙される者の血だけが流れるわけではない。
コイズミのノタマウ「頑張った人を応援する」とは、彼らの負担を増やし、給付を減らすことで「節約」したお金を「頑張っている」トヨタ自動車やキヤノン販売の減税財源とするということなのだ。

障害者自立、国が目標値 施設入所を1万人減
2006年02月09日17時34分朝日新聞

 厚生労働省は9日、4月からの障害者自立支援法施行に伴って都道府県や市町村が定める「障害福祉計画」のもととなる国の基本方針をまとめた。障害者施設の入所者約15万人を11年度までに約7%減らすことや、精神科病院の入院患者の5万人削減、現在年間2000人の新規民間雇用を4倍に増やすなどの数値目標を初めて設定。障害者が地域で暮らせるようにする「脱施設」の姿勢を鮮明に打ち出した。自治体が今後、この計画に基づいて必要なサービスの基盤整備を進める。  厚労省が昨年10月に行った実態調査では、障害者施設の入所者は身体障害者3万9500人、知的障害者10万1800人、精神障害者4500人の計14万5800人。基本方針はこのうち1万人を11年度までに削減するとしている。  精神科病院の入院患者については、受け入れ環境の整備など条件が整えば退院できる人を約7万人と推計、うち5万人を退院させるとした。退所・退院者は、地域のグループホームや一般住宅などに移ることになる。  障害者の雇用は、昨年6月時点で58%の企業が法定雇用率を達成していないなど進んでいない。NPO法人などと雇用促進のネットワークをつくって職業紹介や訓練をしている自治体もあり、基本方針はこうした取り組みで雇用増を求める。  障害者自立支援法は障害によって異なる福祉サービスを一本化。都道府県や市町村に、施設数や必要なサービス量を盛り込んだ3年ごとの障害福祉計画をつくり、サービス提供態勢を整備するよう求めている。  今回の国の基本方針はこの計画づくりのもとになるもので、自治体には計画達成のために目標値を超える入所施設の指定拒否や、入所施設をグループホームに建て替える際の助成、ホームヘルプサービスなどの充実を図るなどの施策が求められることになる。  これまで障害福祉予算の多くは施設に使われ、精神障害者向けのグループホームのある自治体も3割以下。このため施設で長期間過ごす障害者が多く、グループホームなど地域で暮らす「脱施設」が欧米諸国に比べ遅れていると指摘されてきた。02年末に閣議決定された「新障害者プラン」でも「入所施設は真に必要なものに限定する」として「脱施設」の方向性は打ち出したが、家族が施設を希望するケースも多く、その後も施設入所者は増え続けていた。  障害者自立支援法は、自立した生活に必要な福祉サービス提供などが目的で、障害者が地域で安心して暮らせる「ノーマライゼーション」の考え方に沿ったものだが、自己負担をサービス利用量に応じた「原則1割」とする点に障害者団体などが反発していた。

人の命にかかわることを「目標値」として数字であげて「削減」すること自体に違和感を憶える。反発しているとだけ伝えるのは、問題点を相対化するだけで何の価値判断も示さない。
「障害者団体などが反発しているそうです」。客観報道というよりは傍観報道。
そして、マスメディアだけでなく多くの人々も社会的弱者に対して傍観を決め込んでいるのだろうか。
昨日うちに来たA新聞勧誘員が「メール問題なんて興味ないですか」と連れにのたまっていたので、横から「メールの真偽」などというくだらん問題ばかりやってる新聞なんて読む価値無いんじゃと言いそうになった。

TさんやKさんが笑顔でいられる世界を構築するのはわたしたち自身だろう。
少しだけ関心を持って関わることしか出来ないかもしれないけれど。

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Comments

障害者自立支援法案もそうですけど、老年者控除の廃止も配偶者特別控除の廃止も年金の控除額の縮小も今度の医療制度改革も。

こんな非人道的処置がなされる時代が来るとは本当に思ってなかったです。新自由主義の恐ろしさはまだまだ続く。どんどんアメリカと同じ道を歩む。

アメリカは更なる軍拡のために高齢者の医療費を削減するそうです。現状で国家予算の2割が国防費。日本も続きそうです。今は6%ほどですが、高齢者狙い撃ちは同じやり方。

私は国民(現自民党支持者)がなるべく早く目が覚めるように祈り、記事を書くのみです。

Posted by: レッツら | March 05, 2006 at 09:30 PM

レッツらさんこんばんわ
ほんとうに酷いことばかりよくやるよ!と思います。
1人でも多くの人が目を覚ましてくれることしか現状を変える力にはなりませんものね。

ネットとリアルの両方で民主主義の力を発揮できるようにしていければいいですよね。

Posted by: miyau | March 05, 2006 at 10:59 PM

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